
目次
事例の概要

◆利用サービス | 家族信託組成コンサルティングサービス(プランB・自宅)※ |
◆家族構成 | 母(85歳)=東京都大田区在住 ★委託者兼受益者★ |
長男(45歳)= 埼玉県川越市 在住 ★受託者★ | |
長女(40歳)宮城県仙台市在住 | |
二女(38際)=栃木県宇都宮市在住 | |
◆信託財産 | 自宅マンション(埼玉県川越市・築30年・2LDK)1200万円 |
◆解決までの期間 | 3ヶ月 |
◆相談者 | 長男(勅使河原 龍之介様)(仮名) |
※「家族信託組成コンサルティングサービス(プランB・自宅)」とは、自宅不動産の管理・処分権限の移行を主軸とし、信託スキーム設計から契約書作成、公証役場や信託口口座開設の調整、および信託登記の手配を一括して代行するサービスです。認知症による「実家凍結(売却不可)」リスクを回避できるため、将来の介護施設入居費用に充てるための売却や、管理費用の支払いを円滑にし「いざという時に自宅をスムーズに売却できるようにしたい」という方に最適です。
お母様の急逝後、気力を失っていたお父様が骨折。これを機に急速に高まった「認知症による資産凍結」の不安を、わずか3ヶ月という短期間で払拭した事例です。 家族信託による将来の施設入所に伴う実家売却の準備から、円満な相続を実現する遺産分割対策まで、万全の体制を構築しました。
1.ご依頼の背景:父の骨折と急激な衰え。迫りくる「資産凍結」への不安
ご相談のきっかけは、お一人暮らしをされていたお父様の、突然の転倒と骨折でした。
前年にお母様を見送られてから、気丈に振る舞っていらっしゃったお父様。しかし、この骨折が生活を一変させました。大好きだったゴルフや登山といった生きがいを奪われ、自宅に閉じこもるようになったお父様は、日に日に元気を失っていかれたといいます。お近くにお住まいの長男・勅使河原様は、弱っていくお父様の姿に、胸を締め付けられる思いでいらっしゃいました。
「このまま認知機能まで低下してしまったら、どうなってしまうのか」
お父様の急激な変化を目の当たりにし、勅使河原様の中で漠然とした不安が現実的な恐怖へと変わっていきました。家族会議の末、お父様の安全を最優先に考え、老人ホームへの入所も検討し始めましたが、そこで新たな壁が立ちはだかります。それは「誰も住まなくなる実家」の問題でした。
もしお父様が施設に入れば、実家は空き家となります。人が住まない家は傷みが早く、管理費や固定資産税ばかりがかさむ「負債」になりかねません。「父の老後資金のためにも、実家を売却すべきではないか」。そう考えた勅使河原様がインターネットで情報を集める中で突き当たったのが、「認知症による資産凍結」という言葉でした。
『父が認知症と診断されれば、実家の売却はできなくなる』
この事実は、勅使河原様を突き動かすのに十分でした。「父の判断能力がはっきりしている今しか、チャンスはない」。遠方に住む妹様たちに代わり、自分が家族を守らなければならないという長男としての強い責任感、そして刻一刻とタイムリミットが迫るような焦燥感。そんな切実な想いを抱えて、私たち司法書士法人ミラシアへご相談くださいました。
初回のご相談時、勅使河原様が浮かべていらっしゃった真剣な眼差しと、お父様を案じる深い愛情は、今でも私たちの心に強く残っています。
2.解決までの道のり / ミラシアだからできたこと

ステップ1:初回ヒアリングで、漠然とした不安を明確に整理する
お問い合わせいただいた当初、お客様は「父がもし認知症になってしまったら、実家はどうなってしまうのか」「家を売って施設費用に充てたいが、何から手をつければいいのか皆目見当がつかない」という、切実な焦燥感を抱えていらっしゃいました。インターネットで調べれば調べるほど、難しい法律用語に翻弄され、不安ばかりが募っていたご様子でした。
私たちはまず、お客様が抱える「見えない不安」を可視化するため、ご家族の資産状況、家族構成、そして「お父様にどう過ごしてほしいか」という想いをじっくりとお伺いしました。その上で、絡み合った課題を一つひとつ整理し、解決策を提示しました。
例えば、一般的な「成年後見制度」を利用した場合、たとえご家族が後見人になれたとしても、家庭裁判所の監督下に置かれます。これには、定期的な財産状況の報告などの事務負担が継続的に発生するという側面があります。 また、ご自宅(居住用不動産)の売却には裁判所の許可が必須となります。ご家族の判断だけで即座に契約を進めることはできず、許可の申立て手続きに時間を要したり、裁判所の判断次第では希望するタイミングでの売却が叶わなかったりと、柔軟性が損なわれるリスクをご説明しました。
「何が分からないか分からない」という霧の中にいた状態から、「自分たちの家族には家族信託こそが最善の選択肢だ」という確信へ。進むべき道筋が一本に定まった瞬間、張り詰めていたお客様の表情に、ふっと安堵の色が浮かんだのが非常に印象的でした。
ステップ2:遠方の兄弟姉妹も安心できる、オーダーメイドの制度設計
今回のご家族には、「妹様たちが遠方に住んでおり、実質的な親御様のケアや手続きをご長男が一手に担わなければならない」というご事情がありました。 特定の家族一人が財産管理を行う場合、たとえ献身的なサポートであっても、周囲からは「財産を勝手に使い込んでいるのではないか」といった無用な疑念を持たれやすく、それが将来のトラブル(争族)の火種になるリスクがあります。
そこで私たちは、ご長男様との打ち合わせだけでなく、遠方にお住まいの二人の妹様にもオンライン面談でご参加いただく場を設けました。 「なぜ今、この対策が必要なのか」「家族信託によってどう透明性が保たれるのか」。第三者である司法書士から、制度の仕組みやメリット・デメリットを直接ご説明し、全員が同じ情報と認識を共有できるよう配慮しました。
その上で、具体的な設計として、ご実家の管理権限をご長男に移す「家族信託」に加え、その他の預貯金等の承継先を明確にする「公正証書遺言」の同時作成をご提案しました。 家族信託はあくまで「生前の財産管理」の契約であり、それだけでは相続発生後の遺産分割の公平性までは完全にカバーしきれないからです。
「現在の財産管理(家族信託)」でご長男が動きやすい体制を作りつつ、「将来の資産承継(公正証書遺言)」で妹様たちの遺留分や配分にも配慮する。 さらに、そのプロセスに妹様たちも関与していただくことで、兄弟姉妹全員が疑念なく協力し合える、盤石な法的体制を整えることができました。
据えた包括的な設計図を描くことで、ご長男だけでなく、遠方の兄弟姉妹全員が納得し、疑念なく協力し合える法的体制を整えました。
ステップ3:父の体調に左右されない。「受託者の権限」で完結する売却準備
ここが今回のスキームにおける実務上の最大の要諦です。「施設入所が決まったら、空き家になる実家をすぐに売却したい」というご希望に対し、私たちは「お父様の健康状態がどう変化しようとも、確実に契約を履行できる」体制を構築しました。
通常、不動産の売却には所有者ご本人の厳格な意思確認が求められます。しかし、家族信託契約を締結し、不動産の名義を形式的に受託者(ご長男)へ変更しておくことで、将来の売却活動、契約締結、決済の立ち合いといった一切の手続きを、ご長男の権限のみで執り行うことが可能になります。
仮に、売却のタイミングでお父様の認知症が進行していたとしても、契約の有効性が問われたり、手続きがストップしたりすることはありません。「売ろうと思ったのに売れない」という最悪の事態(資産凍結)を回避し、法務と実務の両面から、機動的かつスムーズに不動産を現金化できる出口戦略を確保しました。
ステップ4:売却代金も「信託口口座」で分別管理。
仕組みを作って終わりではありません。私たちは、売却によって得られた「多額の資金」の管理の安全性にもこだわりました。 実家を売却した際の代金は、お父様の個人の通帳ではなく、今回新たに開設した「信託口口座(しんたくぐちこうざ)」に入金されるよう手配しました。
この「信託口口座」は、委託者(父)とも受託者(長男)とも切り離された「信託財産専用の財布」としての機能(倒産隔離機能)を持っています。 これにより、万が一お父様の個人口座が認知症等で凍結されたり、逆にご長男個人の相続や破産等が発生したりしても、この口座にある資金は法的に守られ、お父様の生活費や施設費用として確実に使い続けることができます。
実は、この信託口口座の開設は金融機関ごとに審査基準や取り扱いが異なり、実務上、難易度が高い手続きの一つです。 しかし、私たちはこれまでの豊富な組成実績と経験に基づき、金融機関と円滑に連携。口座開設から不動産の信託登記までを約3ヶ月という短期間で完遂しました。お父様の体調が変化する前に、将来にわたって財産を守り抜くための環境を、スピーディかつ確実に整えることができました。
3.サポートの結果とお客様の声
ご相談から約3ヶ月。お父様の体調が将来どう変化しても、ご長男様の判断だけですぐに実家を売却できる仕組みを整えました。金融機関との難しい調整などはすべて私たちが引き受け、お父様がお元気なうちにすべての手続きを完了できました。
これにより、将来ご実家が空き家になっても、維持費だけがかかり続ける負担にならず、必要なタイミングでスムーズに売却して、そのお金を施設費用に充てることができます。
また、今回は「家族信託」だけでなく、「公正証書遺言」もセットで作ったことが大きなポイントです。 お父様に万が一のことがあっても、兄弟姉妹であらためて遺産の分け方を話し合う必要がありません。遠方のご家族も含め、みんなが悩みや負担を抱えることなく、円満に引き継げる準備が整いました。
さらに、法律の手続きだけで終わらせず、信託された不動産の扱いに詳しい不動産会社のご紹介も行っています。「法的な準備」から「実際の売却」まで迷わずに進める、万全の環境をご提供しました。
すべての手続きを終えた後、勅使河原様より温かいメッセージをいただきました。
「父が元気なうちに、将来への備えをすべて完了できて、心の底からホッとしています。 最初は『何とかしなければ』という焦りばかりで、何から手をつければいいのか分からず不安な日々でした。ミラシアさんは、そんな私たち家族の状況を整理し、法的な手続きはもちろん、将来の不動産売却の段取りまでトータルでサポートしてくれました。 専門的なことはすべて安心してお任せできたので、肩の荷が下りた気分です。おかげで、これからは不安なく父との時間を大切にし、介護にも専念できそうです。本当にありがとうございました。」
4.担当司法書士から
初にお問い合わせをいただいた際、お父様の体調変化に対する不安と、「長男として自分が動かなければ」というお気持ちが、メールの文面から強く伝わってきました。 「父の記憶がはっきりしているうちに何とかしたい」という時間の制約がある中で、いかに確実に、抜け漏れなく手続きを進めるかが今回の大きな課題でした。
今回のケースでは、ただ家族信託の契約書を作るだけでは不十分だと判断しました。 将来、実家を売却する際にスムーズに動けるよう不動産会社と連携をとっておくことや、その後の相続で揉めないよう公正証書遺言を準備しておくこと。これらをセットで行わなければ、本当の意味でご家族の負担を取り除くことはできないと考えたからです。
私たち司法書士法人ミラシアは、法律の知識だけでなく、実家売却という「出口」まで見据えた実務経験を大切にしています。 机上の空論ではなく、「実際に使える仕組み」を作る。今回はその経験を活かし、法務と実務の両面からサポートさせていただきました。
全ての手続きを終えてご報告した際、勅使河原様が「これでようやく、父のことに専念できます」と、ほっとされた表情でおっしゃっていたのが印象的でした。ご長男としての肩の荷を少しでも下ろすお手伝いができたなら、専門家としてこれほど嬉しいことはありません。
今回作った仕組みは、ご家族がこれからの時間を安心して過ごすための土台となるものです。 ご家族の状況は、いつ変化するか分かりません。「何から始めればいいか分からない」「自分たちの場合はどうだろう」と思われたら、一人で抱え込まず、まずは私たちにご相談ください。 あなたのご家族にとって何が一番良い方法なのか、一緒に考えさせていただきます。



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