
目次
事例の概要

◆利用サービス | 「家族信託組成コンサルティングサービス(プランC・収益物件)」 |
◆家族構成
| 父(82歳)=東京都練馬区在住 ★委託者・当初受益者★ |
長女(55歳)=東京都中央区在住 ★受託者★ | |
長男(50歳)=東京都練馬区在住 ★第二受益者★ | |
◆信託財産 | (不動産) 練馬区のご自宅(50坪、築45年)、アパート(60坪) (金銭) 5000万円 |
◆解決までの期間 | 4ヶ月 |
◆相談者 | 松原恵(仮名) |
※「家族信託組成コンサルティングサービス(プランC・収益物件)」とは、収益不動産の管理・処分権限をご家族へ移転することを目的に、信託スキーム設計から契約書作成、公証役場や信託口口座開設の調整、および信託登記手続を一括して代行するサービスです。認知症による「経営凍結」リスクを回避できるため、信託口口座での家賃管理や賃貸借契約、大規模修繕・建替え・売却を行う権限をご家族へ託し、「不動産経営を停滞させず、円滑に資産承継したい」という方に最適です。
お母様を亡くされ、お父様と同居されているご長男の将来を案じたご相談です。
ご長男は発達障害と強迫障害があり、大学中退後から無職でひきこもりの状態にありました。当初、お父様とご相談者である長女様は、遺言書でアパートと駐車場をご長男に相続させる予定でした。
しかし、ご長男が自ら不動産管理を行うことの困難さや、遺言書だけでは根本的な財産管理ができないという課題に直面されます。その後、当法人の代表が登壇したセミナーをきっかけにご相談いただき、約4ヶ月で家族信託と公正証書遺言を組み合わせた解決策を実行し、ご長男の長期的な生活を支える仕組みを構築した事例です。
1. ご依頼の背景:”親亡き問題”の対策とは?
今回ご相談くださったのは、都内にお住まいの長女の松原様です。お母様はすでに他界されており、お父様はご長男と同居されていました。ご長男は発達障害や強迫障害を抱えており、大学を中退して以降、無職でひきこもりの状態にありました。お父様と松原様はご長男の就労が難しい状況を深く案じ、お父様が所有するアパートと駐車場を遺言書によってご長男に相続させ、将来の生活の糧にしてもらうことを計画されていました。
しかし、計画を進める中で大きな課題に直面されます。遺言書は「お父様が亡くなった時、誰に財産を引き継ぐか」を決めることはできても、引き継いだ後の「継続的な財産の管理方法」までを指定することはできません。アパートをご長男名義で相続させた場合、ご長男自身が修繕手配や入居者対応、固定資産税の支払いといった煩雑な賃貸経営を行わなければならず、それは現実的に困難でした。
また、ご長男が不動産という大きな財産を直接手にすることで、悪意のある第三者から詐欺などの不利益を受けたり、適切に管理できずに財産を散逸させてしまったりするリスクも払拭できません。
さらに、ご高齢であるお父様が認知症を発症し判断能力が低下した場合、不動産の修繕や売却ができなくなる資産凍結のリスクも差し迫っていました。
そのような折、当法人の代表である元木が副代表を務める「OSDよりそいネットワーク」主催のセミナーに松原様がご参加されたことが転機となりました。セミナーで家族信託という制度を知り、不動産管理の負担をご長男に負わせることなく、安全に生活費を給付し続けられる仕組みが構築できるのではないかと考え、当法人へご相談にいらっしゃいました。
2.解決までの道のり / ミラシアだからできたこと

ステップ1:初回相談で現状を整理し、受益者連続型の家族信託をご提案
お父様と松原様にご来所いただき、初回のご相談を承りました。お二人は、遺言だけではご長男の将来を守りきれないという切実な不安を抱えていらっしゃいました。
私たちは、ご家族の状況と保有財産を詳細にヒアリングした上で、今回のケースにおいて親亡き後問題に最適なスキームである「受益者連続型の家族信託」をご提案しました。
家族信託の最大の特長は、財産の「管理・処分する権限」と「利益を受け取る権利(受益権)」を切り離せる点にあります。今回の仕組みでは、お父様が元気なうちはお父様自身を当初受益者とし、お父様がお亡くなりになった後は、ご長男を第二受益者として設定します。
受益者連続型信託を導入する大きなメリットは以下の3点です。
1つ目は、ご長男が一切の管理業務を行う必要がないことです。ご長男に代わって受託者である松原様がアパートの管理や手続きを一手に担い、ご長男はそこから生じる賃料収入のみを定期的な生活費として安全に受け取り続けることができます。
2つ目は、お父様の生前における認知症対策になる点です。お父様の判断能力が低下しても、受託者である松原様が管理を継続できるため、資産凍結を防ぐことができます。
3つ目は、ご長男亡き後の財産の行方を指定できる点です。遺言書では「長男の次に誰へ財産を渡すか(次の世代の相続)」までを指定することは法的に認められていません。しかし、受益者連続型信託であれば、ご長男が亡くなった後の財産の帰属先までお父様の意思であらかじめ決めておくことが可能であり、将来にわたる不安を根本から解決できます。
この具体的なご提案により、お二人の不安が明確な解決策に変わっていく手応えを感じました。

ステップ2:ご家族の状況に合わせた財産の切り分けとオーダーメイドの信託設計
次に、具体的な財産の分け方と信託のルールを設計していきました。
全ての財産を信託するのではなく、管理や入居者対応の手間がかかる「アパート」のみを信託財産としました。一方、管理が比較的容易な「駐車場」については、お父様の遺言書によって松原様が相続するという方針を決定しました。ご家族の実情に合わせて家族信託と遺言書を適切に組み合わせることで、より実務的で無駄のない財産承継が可能になります。
また、信託の受託者となる松原様に万が一のことがあった場合に備え、後継受託者として松原様の夫、その次は松原様のご長男(お父様にとっての孫)を指定する内容を信託契約に盛り込みました。当法人がこれまで数多くの親亡き後問題の相談を受けてきた知見を活かし、長期間安定した家族信託を行えるようなスキームを構築しました。
ステップ3:公正証書作成の手続きを迅速に代行
契約内容が固まった後、法的な効力を確実なものにするため、家族信託契約書と駐車場に関する遺言書をそれぞれ公正証書で作成する手続きに進みました。
公証役場との事前の専門的な文案調整や、登記に必要な書類の収集など、煩雑な手続きは当法人の専門家が全て代行しました。お父様のご負担を最小限に抑えるためスケジュール調整を速やかに行い、公正証書作成の当日は公証役場へ同行して最終確認に立ち会いました。
ご相談から約3ヶ月という期間で、お父様の判断能力が低下する前に、全ての法的手続きを無事に完了させることができました。
3.サポートの結果とお客様の声
約4ヶ月のサポートを経て、お父様の生前における認知症対策と、ご長男の長期的な財産管理対策を同時に実現する体制が整いました。
アパートを信託財産としたことで、お父様亡き後もご長男は不動産管理の負担や責任を負うことなく、受託者である松原様を通じて安定した賃料収入を受け取り続けることができます。
また、駐車場については遺言で松原様へ引き継ぐことで、財産ごとの適切な管理手法を確立し、ご長男が財産を散逸させるリスクや第三者から搾取されるリスクを排除しました。後継受託者も指定したことで、お父様、ご長男、そして松原様のご家族へと続く長期間の生活基盤が守られる仕組みが構築されています。
全ての手続きが完了し、公正証書の謄本をお渡しした際、ご依頼者の松原様からは次のようなお言葉を頂戴しました。
4.担当司法書士から
初めてご相談いただいた際、お父様と松原様がご長男の将来をどれほど深く案じているかが痛いほど伝わってまいりました。ひきこもりや障害を抱えるご家族の「親亡き後問題」において、遺言書による単なる財産移転だけでは、ご本人の生活を守り切れないケースが多々あります。残されたご家族が安全に、そして確実に生活費を受け取り続けられる実務的な「管理の仕組み」を作ることが最も重要です。
今回ご提案した「受益者連続型の家族信託」は、財産の管理と利益を切り離すことができるため、親亡き後問題に非常に有効な解決策となります。しかし、本件のようにアパートは信託し、駐車場は遺言で処理するといったように、財産ごとの管理の難易度や目的を見極め、複数の制度を組み合わせるには専門的な実務判断が不可欠です。当法人では、数多くのご相談案件で培ったノウハウをもとに、ご家族ごとの事情に合わせたオーダーメイドの設計を行っております。
手続き完了後、お父様と松原様の安堵された表情を拝見し、専門家としてご家族の安心な未来を築くお手伝いができたことを大変嬉しく思います。
ご家族の将来に関する不安、特に親亡き後の財産管理については、遺言書を書くだけで安心できるとは限りません。一人で悩みを抱え込まず、まずは現状のお気持ちをお聞かせください。ご家族の状況に応じた最適な解決策をご提案いたしますので、お気軽にご相談ください。

司法書士 元木翼


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