
目次
事例の概要

◆利用サービス | 「家族信託組成コンサルティングサービス(プランB・自宅)」 |
◆家族構成
| 父(84歳)=神奈川県鎌倉市在住 ★委託者★ |
母(85歳)=神奈川県川崎市在住 | |
長男(55歳)=東京都足立区在住 ★受託者★ | |
| 次男(51歳)=神奈川県横浜市在住 ★受託者★ | |
◆信託財産 | (不動産) 鎌倉市のご自宅(40坪、築45年) 横浜市の貸ビル(3階建て、築40年) (金銭) 2500万円 |
◆解決までの期間 | 4ヶ月 |
◆相談者 | 立石徹様(仮名)、立石宏様(仮名) |
※「家族信託組成コンサルティングサービス(プランB・自宅)」とは、「家族信託組成コンサルティングサービス(プランB・自宅)」とは、自宅不動産の管理・処分権限をご家族へ移転することを目的に、信託スキーム設計から契約書作成、公証役場や信託口口座開設の調整、および信託登記手続を一括して代行するサービスです。認知症による「実家凍結(売却不可)」リスクを回避できるため、将来の介護施設入居費用に充てるための売却や、管理費用の支払いを円滑にし「いざという時に自宅をスムーズに売却できるようにしたい」という方に最適です。
当法人の「家族信託組成コンサルティングサービス(プランB・自宅)」「同サービス(プランC・収益物件)」をご利用いただき、約4カ月間でご家族の財産管理・承継体制を構築した事例です。
ご相談者の立石徹様(長男・55歳)と宏様(次男・51歳)のお父様(84歳)は神奈川県鎌倉市のご自宅から、お母様(85歳)は川崎市から、それぞれ別の老人ホームに入居されていました。
お父様の保有財産は、現在空き家となっている鎌倉市のご自宅、売却検討中の横浜市の貸ビル(アパート)、および株式・預貯金などです。
お母様が重度の認知症であり、お父様に万が一のことがあった際の遺産分割協議が不可能であること、また、お父様ご自身も脳梗塞の後遺症で自筆の署名や外出が困難であるという課題を抱えていました。
当法人のサポートにより、不動産ごとに受託者を分ける家族信託と出張による公正証書遺言を組み合わせ、二次相続の税負担増を回避しながら、お父様のご意向に沿った円滑な資産承継を実現しました。
1. ご依頼の背景~母の認知症による遺産分割協議の壁と、二次相続への懸念~
ご相談者の長男・徹様と次男・宏様のお父様は、鎌倉市のご自宅を離れ、老人ホームに入居されていました。新型コロナウイルスの流行を機に、お母様も川崎市の別の施設へ入居されており、ご兄弟も多忙なためご両親に頻繁に面会に行くことが難しい状況でした。
お父様は判断能力に全く問題はありませんでしたが、脳梗塞の後遺症で足が不自由であり、ご自身での署名や外出が困難な状態にありました。一方、お母様は重度の認知症を患っており、意思疎通ができない状態でした。
ご兄弟が最も危惧されていたのは、将来お父様に相続が発生した際の遺産分割です。お母様に判断能力がないため、そのままでは遺産分割協議が成立しません。法的手続きを進めるにはお母様に成年後見人をつける必要がありますが、後見人が就任すると、お母様の法定相続分を厳格に確保しなければならなくなります。お母様ご自身もすでに相当額の金融資産をお持ちであったため、お父様の財産を法定相続分通りに引き継ぐと、将来お母様がお亡くなりになった際(二次相続)の税負担が跳ね上がってしまうという重大な課題を抱えていました。
また、お父様ご自身には「現在空き家となっている鎌倉の自宅は長男へ、老朽化して売却も検討している横浜の古アパートは次男へ引き継がせたい」という明確なご意思がありました。これらの不動産は、お父様の生前に売却などの処分や利活用を行う可能性もあったため、ご兄弟は生前の財産管理手法として家族信託の利用を検討され、当法人へご相談にいらっしゃいました。
2.解決までの道のり / ミラシアだからできたこと


ステップ1:初回相談での課題整理と、不動産ごとに受託者を分ける家族信託の提案
初回面談にて、ご兄弟からご家族の状況と財産内容、そして「鎌倉の自宅は長男へ、横浜のアパートは次男へ」というお父様のご意向を詳細にヒアリングしました。
ご兄弟は当初、どちらか一方がすべての財産を管理する一般的な家族信託を想定されていました。しかし当法人からは、不動産ごとに受託者を分ける家族信託の設計をご提案しました。
家族信託は受託者を1名に絞る必要はなく、財産ごとに分けることが可能です。
鎌倉の自宅は長男の徹様を、横浜のアパートは次男の宏様を受託者と設定しました。これにより、将来その不動産を承継する予定の者が、お父様の生前から責任を持って管理できるようになります。
仮にお父様の介護資金捻出のために不動産を売却・修繕する必要が生じた際も、ご兄弟が互いの印鑑や書類を求め合うことなく、それぞれが単独の権限でスピーディーに手続きを進められるという実務的なメリットをご説明し、大変ご納得いただきました。
ステップ2:実務上の制約を考慮した、有価証券の信託除外と遺言への切り替え
次に、約6000万円の株式や投資信託といった有価証券の取り扱いについて検討しました。当初ご兄弟は、すべての財産を信託財産に含めることを希望されていました。
しかし、実務上、有価証券を家族信託で管理するには、証券会社で専用の「信託口口座」を開設する必要があります。調査の結果、お父様が利用されている証券会社ではこの信託口口座の取り扱いがないことが判明しました。 対応可能な別の証券会社へすべての金融資産を移管するという方法もありましたが、ご高齢のお父様や多忙なご兄弟にとって、移管手続き自体が膨大な手間となります。
さらに、現在のポートフォリオは十分な配当を生み出しており、お父様の生前に急いで売却・現金化する必要性が低いという実態がありました。
そこで当法人は、無理に証券会社を変更してまで信託に組み込むことは推奨せず、有価証券については家族信託の対象から外し、遺言によって承継先を指定するという方針への切り替えをご提案しました。実務上のハードルとご家族の負担を天秤にかけ、最も合理的で安全な手法を選択しました。
ステップ3:公証人の出張を活用した、外出・署名不要の公正証書遺言の準備
信託の対象外とした有価証券の確実な承継と、二次相続対策を完成させるため、家族信託契約と並行して公正証書遺言の作成を進めました。
ここでの最大の障壁は、お父様が脳梗塞の後遺症でペンを握れず、自筆での署名が不可能であり、かつ外出も困難であるという点でした。法律上、自筆証書遺言はどのような理由があっても自筆でなければ無効となります。また、近年利用されることの多い法務局での「自筆証書遺言書保管制度」も、いかなる理由があってもご本人が必ず法務局へ直接出向いて手続きを行う必要があり、代理人の対応は一切認められていません。そのため、お父様の状況では自筆証書遺言の作成および保管制度の利用は不可能でした。
しかし、公正証書遺言であれば、公証人がご本人の意思を直接確認して作成するため、ご本人が署名できなくても法的に有効な遺言を残すことが可能です。さらに、足が不自由なお父様が公証役場へ足を運ぶ負担をなくすため、当法人が公証役場と事前調整を行いました。遺言の原案作成から必要書類の収集、スケジュールのすり合わせまでをすべて当法人が代行し、お父様が入居されている老人ホームまで公証人に出張してもらう手配を整えました。
ステップ4:ご家族全員の合意形成と、生前管理から承継までの体制構築
最終的に、長男様・次男様それぞれを受託者とする2本の家族信託契約書と、お父様の公正証書遺言の文案を作成しました。各条文が持つ法的な意味や、将来発生しうるリスクへの備えについてご兄弟に丁寧にご説明し、内容を固めました。
施設での契約および遺言作成当日は、当法人の司法書士も同席いたしました。公証人がお父様のベッドサイドで契約書と遺言書の内容をゆっくりと読み上げ、お父様がはっきりとした声で同意の意思を示されました。
ご自身での署名は叶いませんでしたが、公証人の職権によってすべての手続きが法的に完了しました。施設の一室で、お父様のご意思が確実な法的効力を持つ形となり、その場に立ち会われたご兄弟の安堵の表情が印象的でした。
3.サポートの結果とお客様の声
約4カ月間のサポートを通じて、お父様のご意思を反映した確実な財産管理・承継体制が整いました。
不動産ごとに受託者を分けた家族信託を組成したことで、お父様の生前からご兄弟それぞれが単独で不動産の管理や売却を担えるようになりました。
また、遺言書を組み合わせたことで、将来の遺産分割協議が不要となり、成年後見制度の利用によるお母様の法定相続分確保とそれに伴う二次相続の税負担増という最大のリスクを回避することができました。
お父様が施設から一歩も出ることなく、法的に有効な仕組みを構築できたことは実務上も大きな成果です。
すべての手続きを終えた後、立石様ご兄弟からは、下記のメッセージをいただきました。
4.担当司法書士から
初めてご相談いただいた際、離れて暮らすご両親へのご心配と、行き詰まりを感じていらっしゃるご兄弟の切実な状況が伝わってまいりました。本件は、お母様の認知症によって将来の遺産分割ができなくなるリスクに加えて、お父様ご自身も字を書いたり外出したりすることが難しい状況でした。さらに、ご両親がそれぞれ別の施設に入居されており、ご兄弟も多忙で簡単には集まれないという、いくつものハードルが重なる事案でした。
解決の糸口となったのは、すべての財産を無理に一つの枠組みで処理しようとせず、財産ごとに最適な手法を選択した点にあります。将来の承継先が決まっている不動産については、不動産ごとに受託者を分けた家族信託で生前に管理権限を移しました。一方で、実務上信託が難しい有価証券については公正証書遺言で承継先を確定させました。この「信託と遺言の使い分け」が、ご家族の財産を最も確実に守るための実務的な判断でした。
また、ご自身で署名ができない、法務局などの窓口へ行けないという状況であっても、公証人の出張制度を活用すれば、ご本人の意思を法的に有効な形で残せるという事実をご案内できたことは、ご家族にとって大きな安心材料になったかと思います。
ご家族の状況や財産構成は一つとして同じものはありません。認知症に伴う将来の不安や、親族間での複雑な財産手続きでお悩みの場合は、どうかお一人で抱え込まずに当法人までご相談ください。状況の整理から具体的な実務手続きの完了まで、専門家としてしっかりとサポートいたします。

司法書士 元木翼


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