離れて暮らす父と長男でも家族信託はできる。静岡の自宅・駐車場の管理と、将来の相続の公平を遺言書も組み合わせて整えた事例

事例の概要

 

◆利用サービス

「家族信託組成コンサルティングサービス(プランB・自宅)」

◆ご家族

父(90歳)=静岡県掛川市在住       ★委託者★ 

母(89歳)=静岡県掛川市在住  

長男(58歳)=東京都墨田区在住      ★受託者★

長女(55歳)=神奈川県横浜市   

◆信託財産

(不動産)
静岡県掛川市の自宅・駐車場(150坪、築50年)
(金銭)
4000万円

◆ご相談者

岡田 大樹 様(仮名)

◆解決期間

約2ヵ月

※「家族信託組成コンサルティングサービス(プランB・自宅)」とは、自宅不動産の管理・処分権限をご家族へ移転することを目的に、信託スキーム設計から契約書作成、公証役場や信託口口座開設の調整、および信託登記手続を一括して代行するサービスです。認知症による「実家凍結(売却不可)」リスクを回避できるため、将来の介護施設入居費用に充てるための売却や、管理費用の支払いを円滑にし「いざという時に自宅をスムーズに売却できるようにしたい」という方に最適です。

本件は、静岡県掛川市にお住まいの90歳のお父様について、東京都在住の長男様を受託者とする家族信託を組成し、あわせて公正証書遺言も作成した事例です。

対象となったのは、掛川市のご自宅と一部を賃貸している駐車場、そして現金4,000万円でした。お父様には加齢に伴う年相応の認知機能の低下がみられ、今後、財産管理や不動産の処分が難しくなる前に備えたいというご希望がありました。もっとも、ご本人は静岡、受託者となる長男様は東京、長女様は横浜と、家族が離れて暮らしていたため、どこの専門家に依頼するのか、公証役場をどこにするのか、信託口口座をどこで開設するのかが大きな論点になりました。

ミラシアでは、お父様の負担をできる限り抑えるため静岡へ出張し、地元で契約手続を進める一方、受託者である長男様が管理しやすい都内金融機関で信託口口座の開設を支援しました。さらに、長女様への過去の生前贈与も踏まえ、公正証書遺言を組み合わせることで、管理だけでなく承継の公平にも配慮した体制を約2カ月で整えました。

1.ご依頼の背景~離れて暮らす家族で、認知機能低下への備えと承継の公した。お父様は静岡県掛川市でお母様と暮らしておられ、ご自宅と、その敷地の一部を利用した駐車場を所有していました。築50年のご自宅は敷地が広く、駐車場収入もあるため、単に住まいを守るというだけでなく、日常の管理や契約関係、固定資産税の支払い、修繕対応まで視野に入れた備えが必要な状況でした。

お父様には、診断がつくほどの重い認知症があったわけではありません。しかし、ご家族からみると、同じ話を繰り返すことが増えたり、書類の確認に時間がかかったり、金融機関の手続に対する負担感が強くなってきたりと、加齢に伴う変化が少しずつ見られていました。こうした段階であれば、まだ意思確認を前提にした対策を取りやすい一方、先延ばしにすると、急に動けなくなることもあります。

実際、新聞で認知症対策に関する記事を読み、家族信託の必要性を感じたことが、今回のご相談のきっかけでした。その後、ご家族で調べる中でミラシアを見つけ、遠距離でも対応できるかどうかを含めてお問い合わせをいただきました。

本件で難しかったのは、単に家族信託を作るかどうかではありませんでした。お父様は静岡県掛川市、長男様は東京都墨田区、長女様は神奈川県横浜市と、家族が別々の地域に住んでいます。すると、実務上は次のような問題が出てきます。誰が主に窓口になるのか。契約の説明はどこで行うのか。公証役場は静岡で進めるのか、東京で進めるのか。信託口口座はどの地域の金融機関で開設するのが現実的か。年配のご本人に、何度もオンラインでの説明や書類確認を求めるのは現実的なのか。こうした論点は、遠距離の家族信託では非常に重要です。

さらに、長女様は過去に自宅購入の際、ご両親から生前贈与を受けていました。そのため、今回の対策は、単にお父様の財産管理をしやすくするだけでは足りませんでした。将来、相続が発生したときに、なぜこの内容になっているのかを家族全員が理解できるようにしておかないと、あとで不公平感や誤解が生じるおそれがあります。

家族信託は財産管理の仕組みとして非常に有効ですが、それだけで相続の公平まで自動的に整うわけではありません。
この点をどう整理するかが、本件の大きなテーマでした。

2.解決までの道のり / ミラシアだからできたこと

 

ステップ1 遠距離案件として、最初に「誰がどこで何を動かすか」を整理

初回相談では、家族信託の条文をいきなり詰めるのではなく、まず全体の進め方を整理しました。遠距離の案件では、契約内容そのものより先に、手続の動線を設計することが大切です。ここが曖昧なまま進めると、あとから公証役場や金融機関の段階で手続が止まりやすくなります。

本件では、ご家族で話し合った結果、日頃からご両親との連絡を多く取り、今後の管理実務も中心となって担う予定だった長男様を受託者とする方針にしました。そして、信託財産には掛川市のご自宅・駐車場と現金4,000万円を組み入れる設計としました。現金を入れたのは、単に預金を移すためではなく、固定資産税、修繕費、駐車場の管理費、お父様の生活に関わる支払いなどに対応しやすくするためです。不動産だけを信託して現金を入れないと、実務ではかえって動きにくくなることがあります。

また、どこの専門家に依頼すべきかも検討しました。遠距離案件では、「親の近くの専門家に頼むべき」と思われがちですが、必ずしもそうではありません。逆に、「子が東京にいるから東京の専門家が当然有利」とも限りません。重要なのは、誰が中心になって動くのか、どこで説明や調整を重ねるのか、口座開設後の管理を誰が担うのか、という実務の重心です。

遠距離の家族信託では、親の住所地だけで専門家を決めるのではなく、手続全体の重心がどこにあるかで判断することが重要です。

ミラシアでは、案件によっては、あえて現地の専門家をおすすめしたり、ご紹介したりすることもあります。本件でもその検討は行いました。しかし、今回は、設計の中心が長男様との継続的な打合せにあり、信託口口座の管理も都内で行う予定であったこと、そしてお父様のご負担を減らすためにこちらが静岡へ動く方が合理的であったことから、ミラシアが全体を主導する形が適切だと判断しました。

ステップ2 お父様の負担を抑えるため、地元公証役場と都内金融機関を使い分けて実行

次に問題になったのが、実際にどこで手続を行うかです。90歳のお父様に何度も東京までお越しいただくのは現実的ではありません。しかも、ご高齢の方にとって、オンライン面談だけで複雑な契約内容を理解し、確認し、判断していただくのには限界があります。画面越しでは細かな表情や反応をつかみにくく、ご本人のご負担も想像以上に大きいからです。

そこで本件では、ミラシアの司法書士が静岡へ出張し、お父様と対面で説明を行いながら、契約内容の最終確認を進めました。公証役場についても、お父様の地元で進める方針とし、移動距離と身体的負担をできる限り抑えました。公正証書にすることで、内容の明確性や証拠力を確保できるだけでなく、ご本人の意思確認の点でも安心感があります。

一方で、信託口口座については別の考え方を取りました。信託口口座は、契約時に一度作れば終わりではありません。むしろ、開設後に受託者が日常的に使い、管理し続けるものです。駐車場収入の入金、固定資産税や修繕費の支払い、帳簿管理など、継続的な運用が伴います。そのため、本件では受託者である長男様が通いやすく、実際に管理しやすい都内の金融機関を前提に調整を進めました

公証役場は委託者に近い場所、信託口口座は受託者が管理しやすい場所で考える。これが遠距離家族信託では実務上とても大切です。

この点は、一般の方には見落とされやすいところです。家族信託というと契約書の中身に目が行きがちですが、現場では「契約後に誰がどう動くか」の方がむしろ重要です。書類上はきれいに見えても、口座の運用や現地の不動産管理が回らなければ意味がありません。ミラシアでは、契約書の作成だけでなく、その後の運用実務まで見据えて設計することを大切にしています。

ステップ3 家族信託だけで終わらせず、公正証書遺言を組み合わせて承継の公平を整備

本件でもう一つ重要だったのが、長女様への過去の生前贈与をどう位置付けるかでした。家族信託を使えば、お父様が元気なうちに管理権限を長男様へ移し、将来の凍結リスクに備えることはできます。しかし、それだけでは、最終的にどの財産を誰がどのように承継するのかという問題は十分に整理できません。

特に、すでに一部の子に対して生前贈与が行われているご家庭では、その事情を踏まえて承継方法を明確にしておかないと、後になって「聞いていなかった」「なぜそうなったのか分からない」という不満が出やすくなります。そこで本件では、家族信託と並行して公正証書遺言も作成することにしました。

遺言書では、長女様がこれまでに受けた支援も踏まえながら、お父様のお考えがどこにあるのかを明確にし、残る財産の承継方針を整理しました。ここで大切なのは、単に法的な文書を作ることではありません。なぜこの内容にするのかを家族に伝わる形にしておくことです。そのため、長男様だけでなく長女様にも事前に考え方を共有し、ご家族として納得感を持てる状態を整えました。

家族信託で管理を整え、遺言書で承継を整える。この組み合わせが、本件では最も現実的で、後のトラブル予防にもつながる方法でした。

司法書士の立場からみても、家族信託だけで全てを解決しようとするのは危険です。家族信託は万能ではありません。管理の場面には強い一方で、承継全体の設計は遺言書の方が適している場面が少なくありません。本件は、その典型的なケースでした。

3.サポートの結果とお客様の声

本件では、約2カ月で家族信託契約の締結、公正証書化、信託登記、信託口口座の開設準備、そして公正証書遺言の作成までを一通り整えることができました。これにより、今後お父様の認知機能がさらに低下した場合でも、長男様が受託者として自宅・駐車場の管理や必要な支払いに対応しやすい体制ができました。駐車場の契約関係や修繕、将来の売却の検討なども、家族として動きやすくなっています。

また、長女様への過去の生前贈与という事情についても、遺言書を作成したことで、お父様のお考えを法的に明確な形で残すことができました。結果として、本件は「不動産管理の備え」と「承継の公平感への配慮」の両方を整えた事例になったといえます。

お客様からは、次のようなお声をいただきました。

「父が静岡、私が東京に住んでいるので、家族信託は難しいのではないかと思っていました。ですが、何をどこで進めるのかを最初に整理してもらえたので、不安がかなり減りました。父を何度も遠くへ連れて行かなくてよかったのも大きかったです。家族信託を作るだけではなく、姉への過去の生前贈与まで踏まえて遺言書も一緒に整えてもらえたので、将来のことまで見据えた対策になったと感じています。形式的な手続ではなく、実際に家族の中で揉めにくい形を考えてもらえたのがありがたかったです。」

4.担当司法書士から

代表社員 元木翼司法書士  元木翼

本件のように、親は地方、子は首都圏というご家庭は、実務上かなり増えています。こうしたケースで大切なのは、家族信託ができるかどうかを抽象的に考えるのではなく、実際に誰が何を担い、どこでどの手続を行うのかを具体的に落とし込むことです。

家族信託は、契約書を作れば終わりではありません。公証役場、登記、口座開設、その後の運用まで回って初めて意味があります。

特に遠距離案件では、オンラインで済ませられる部分と、対面でなければ難しい部分を見極める必要があります。ご高齢の方については、資料の読み合わせや意思確認は、やはり対面の方が適している場面が多いです。一方で、受託者が継続して使う口座は、その方の生活圏で整える方が実務的です。こうした切り分けは、経験がないと見落とされやすいところです。

また、本件では長女様への生前贈与がありました。ここは非常に重要な点です。生前贈与があるご家庭では、「管理の仕組み」と「承継の仕組み」を分けて考える必要があります。家族信託で管理を整えても、承継についての説明が不十分であれば、あとで不信感が生まれます。だからこそ、本件では遺言書を併用しました。

生前贈与があるご家庭では、家族信託だけで完結させようとせず、遺言書まで含めて全体を設計することが大切です。

もう一つお伝えしたいのは、90歳という年齢だけで「もう遅い」とは限らないということです。重要なのは年齢そのものではなく、その時点でご本人の意思確認ができるかどうかです。逆にいえば、まだ話がしっかりできる段階なら、打てる手はあります。少し物忘れが増えてきた、書類の管理が不安になってきた、その段階こそ相談のタイミングです。

年齢ではなく、意思確認ができるうちに動くこと。これが、家族信託でも遺言でも共通する実務上の大原則です。

本件は、遠距離であっても、進め方を丁寧に設計すれば家族信託は十分に機能すること、そして家族信託だけに頼らず遺言書を組み合わせることで、より現実的で納得感のある対策になることを示した事例でした。ミラシアでは、今後もこうした「現場で実際に回る仕組み」を重視して、家族ごとに無理のない対策をご提案してまいります。

画像 画像
画像 画像
  1. 専門家(国家資格者)による専任担当制
    経験豊富な専門家が専任担当として、業務完了までサポートいたします。
  2. 相続・遺言・家族信託 専門
    当法人は相続・遺言・家族信託専門の事務所です。お客様に最適な解決策をご提案いたします。
  3. 豊富な相談実績・ノウハウ
    1,000件を超える豊富な相談実績から蓄積されたノウハウで高難度な案件にも対応が可能です。
  4. 土日祝祭日や夜間(22時まで)の相談、出張相談も可能
    お仕事などでお忙しい方でも安心して相談頂けます。
  5. スピード対応
    お急ぎのお手続きでもスピーディー・丁寧に対応いたします。
  6. 全国対応
    関東圏に限らず日本全国の案件に対応可能です。

コメント

家族信託の取扱実績全927件※!司法書士法人ミラシア
※集計期間:2017年1月〜2025年12月