
目次
事例の概要

◆利用サービス | 「家族信託組成コンサルティングサービス(プランB・自宅)」 |
◆家族構成
| 父(75歳)=東京都目黒区在住 ★委託者★ |
母(68歳)=東京都目黒区在住 ★受託者★ | |
長女(50歳)=栃木県小山市在住 | |
◆信託財産 | (不動産) 目黒区の自宅マンション(3LDK・築43年) (金銭) 1700万円 |
◆解決までの期間 | 3ヶ月 |
◆相談者 | 松原恵(仮名) |
※「家族信託組成コンサルティングサービス(プランB・自宅)」とは、「家族信託組成コンサルティングサービス(プランB・自宅)」とは、自宅不動産の管理・処分権限をご家族へ移転することを目的に、信託スキーム設計から契約書作成、公証役場や信託口口座開設の調整、および信託登記手続を一括して代行するサービスです。認知症による「実家凍結(売却不可)」リスクを回避できるため、将来の介護施設入居費用に充てるための売却や、管理費用の支払いを円滑にし「いざという時に自宅をスムーズに売却できるようにしたい」という方に最適です。
パーキンソン病を患うご主人様の将来の財産管理について、ご相談者である奥様からお問い合わせいただいた事例です。
当初相談した専門家からは任意後見制度しか提案されず、費用や手間に不安を感じていらっしゃいました。当法人でご相談を承り、任意後見と家族信託を比較検討した結果、奥様を受託者とする家族信託をご契約いただきました。将来のご自宅マンション売却への備えだけでなく、信託が遺言の代わりとなる機能を活用し、ご主人様がお亡くなりになった後の相続手続きまでスムーズに完了した事例をご紹介します。
1. ご依頼の背景:将来の自宅売却への不安と、最初の専門家への疑問
ご相談のきっかけは、パーキンソン病と診断されたご主人様の将来の財産管理に対する奥様のご不安でした。今後病状が進行し、ご主人様の判断能力が低下してしまった場合、将来的に介護費用等を捻出するために自宅マンションを売却したくても、法的な手続きができなくなるのではないかと懸念されていました。
奥様はまず、ご自宅近くの司法書士事務所へ相談に行かれました。しかし、そこで提案されたのは「任意後見制度」のみであり、家族信託という選択肢については一切教えてもらえなかったそうです。任意後見制度を利用する場合、家庭裁判所によって任意後見監督人が選任され、ご主人様の生涯にわたって毎月継続した報酬の支払いが発生します。また、家庭裁判所や監督人に対する厳格で定期的な報告義務も生じると聞き、奥様はランニングコストの負担や手続きの煩雑さに大きな不安を抱かれました。
「本当に任意後見という方法しかないのだろうか」と疑問を持たれていた折、弊社の代表である元木が登壇する家族信託セミナーをご覧になりました。そこで初めて家族信託の存在を知り、セカンドオピニオンとして専門家の意見を聞きたいと、当法人へご相談にお越しいただきました。
2.解決までの道のり / ミラシアだからできたこと

ステップ1:厳格な裁判所への定期報告は不要。任意後見との実務的な違いを徹底比較
ヒアリングを進めると、奥様が最も懸念されていたのは「任意後見制度のランニングコストと事務負担」でした。最初の専門家からは制度の概要しか聞かされておらず、当法人の担当者が「任意後見監督人がつくと、ご主人様が生涯を終えられるまで毎月1〜2万円程度の報酬を支払い続けることになります」とお伝えすると、奥様はとても驚かれていました。
また、事務負担の重さについても詳しくお話ししました。任意後見制度では、家庭裁判所や後見監督人に対して、定期的に財産目録や収支状況を提出する義務が生じます。日常の支出であっても領収書を保管し、1円単位で厳格に記録・管理しなければならないという実務上の負担をご説明すると、「夫の介護だけでも手一杯なのに、そこまで厳密な財産報告を何年も続けるのは到底無理です」と率直なお気持ちを吐露されました。
そこで、私たちは、家族信託をご提案しました。家族信託であれば専門家への継続的な支払いは発生せず、当法人の「定額制かつリーズナブルな初期費用」のみで組成が可能です。また、日々の財産管理の報告先も「家庭裁判所ではなく、受益者(利益を受ける方)であるご主人様」となるため、ご家庭の裁量で柔軟に財産を管理できることをお伝えしました。この具体的な比較により、奥様は「家族信託なら私にもできる」と安心されていました。

ステップ2:遠方の長女に負担をかけない「夫婦間」での柔軟な信託設計
ご主人様の財産を管理する「受託者」を誰にするかという点も、奥様の大きな悩みの種でした。「長女は栃木県で家庭を持ち、仕事も多忙です。東京にいる私たちの財産管理で負担をかけたくありません。でも、同世代の妻である私が受託者になれるのでしょうか?」とご不安なご様子でした。
一般的に家族信託は「親から子へ」というイメージが強いため、奥様がそう思われるのも無理はありません。しかし、実務上は親族であれば「ご夫婦間での家族信託」を設定することも十分に可能です。
私たちは、ご主人様を「委託者兼受益者(財産を託し、利益を受ける人)」とし、日常的に一番近くでご主人様を支えている奥様を「受託者(財産を管理・処分する人)」とする設計をご提案しました。これにより、遠方のご長女を巻き込むことなく、将来ご主人様の判断能力が低下した際でも、奥様ご自身の印鑑と判断で預金の引き出しやご自宅マンションの売却手続きを進められる体制が整いました。「娘に迷惑をかけず、夫婦の問題として自分たちで完結できるんですね」と、奥様が深い安堵の表情を浮かべられたのが非常に印象的でした。
ステップ3:口座凍結を防ぎ遺言の代わりにもなる。相続手続きまで見据えた出口戦略
信託契約書を作成するにあたり、当法人では単に「今の財産管理」をどうするかだけでなく、「ご主人様に万が一のことがあった後」の出口戦略まで綿密に設計します。
通常、ご主人様がお亡くなりになると銀行口座は凍結され、ご自宅の売却等もご家族全員での遺産分割協議が終わるまでできなくなります。奥様は「夫の葬儀費用やその後の私の生活費はどう引き出せばいいのか」という将来の不安も抱えていらっしゃいました。
そこで、今回の信託契約の中に「ご主人様が死亡し信託が終了した際は、残った財産を受け取る人(帰属権利者)を奥様に指定する」という条項を盛り込みました。家族信託には「遺言の代わりになる」という強力な機能があります。この一文を入れておくことで、将来ご主人様にご相続が発生した際、預貯金の解約やご自宅の不動産名義変更を、長女を含めた遺産分割協議を経ることなく、奥様単独の手続きで速やかに完了させることができます。「夫が亡くなった後の面倒な相続手続きまでカバーできるなんて」と、ご家族の将来に対する不安を根本から解消することができました。
3.サポートの結果とお客様の声
ご契約により、ご主人様の判断能力が低下した場合でも、受託者である奥様の権限で「ご自身のタイミングで自宅マンションの売却手続き(不動産会社への媒介依頼や売買契約の締結など)を単独で行える法的な体制」が整いました。懸念されていた家庭裁判所への厳格な報告義務や、監督人への継続的な報酬といった負担も生じず、奥様は経済的・精神的なストレスを抱えることなく、ご主人様のサポートに専念することができました。
その後、家族信託の開始から3年半が経過した折、ご主人様がご逝去されました。通常、ご家族が亡くなられた際は銀行口座が凍結され、不動産の名義変更や預貯金の解約を行うには、相続人全員(今回の場合は奥様と遠方のご長女)での遺産分割協議と実印の押印が必要になります。
しかし本件では、事前の信託契約において「信託終了後の残余財産の帰属権利者を奥様とする」と定めていたため、この条項が遺言書と同じ法的な効力を発揮しました。結果として、ご長女と郵送等で煩雑な書類のやり取りをすることなく、「奥様単独の手続きによって、速やかに預貯金の解約やご自宅の相続登記を完了」させることができました。
すべてのお手続きを終え、奥様からは次のようなお言葉を頂戴しております。
4.担当司法書士から
最初にご相談いただいた際、奥様は最初の専門家から提示された任意後見制度への不安と、ご主人様の病状が進行していくことへのタイムリミットの中で、大変思い悩んでいらっしゃいました。
財産管理の対策において、実務経験の少ない専門家にご相談された結果、他の選択肢を提示されず「認知症対策といえば任意後見しかない」と思い込まれてしまうケースは決して珍しくありません。しかし、任意後見と家族信託では、費用構造や財産管理の自由度、そしてご家族にかかる実務的な負担が全く異なります。
当法人では、ご家族の現在の状況だけでなく、将来的な資産の動かし方(今回はご自宅の売却)や、ご家族の居住地・関係性までを総合的にヒアリングすることを重視しています。今回の事例では、「遠方のご長女に負担をかけない」という奥様のご希望を叶えるため、一般的な親から子へ託す形ではなく、「ご夫婦間での家族信託」という柔軟な設計をご提案いたしました。
さらに、信託契約に「残余財産の帰属権利者の指定」を盛り込んでいたことが、3年半後のご主人様ご逝去の際に大きな効果を発揮しました。深い悲しみの中で、ご家族間で遺産分割協議や書類のやり取りを行うことは、ご遺族にとって心理的にも事務的にも大きな負担となります。その負担を最小限に抑え、奥様ご自身のペースで速やかに財産を引き継ぐお手伝いができたことは、実務家としても非常に意義深いものでした。
専門家から提案された方法に少しでも疑問を感じたり、ご自身のご家庭により適した方法があるのではないかと迷われた際は、決して一人で抱え込まず、セカンドオピニオンとして当法人にご相談ください。多くの実績から得た知見に基づき、ご家族の実情に即した「本当に使える」実務的な解決策をご提案いたします。


司法書士 元木翼


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