公共料金の支払い・名義変更・解約は大丈夫?相続放棄の注意点・対処法

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先日父が亡くなりました。父には借金があったので相続放棄をする予定です。しかし、父が一人で住んでいた家に公共料金の支払いの督促が届いており、支払ってよいものか迷っています。どのように対処すれば良いでしょうか。

お父様の財産から未払いの公共料金を支払ってしまうと、相続放棄できなくなる可能性があるので注意が必要です。

元木司法書士

亡くなった方の名義で水道・光熱費の契約をしていた場合、名義人死亡後は、相続人が料金の支払いや名義変更・解約手続きなどをする必要があります。
しかし、相続人が相続放棄を予定している場合、安易に手続きしてしまうと、相続放棄ができなくなる可能性があるので注意が必要です。

本コラムでは、相続放棄をする予定がある場合の、公共料金支払いや名義変更・解約手続きなどへの対処法をお伝えします。

1 被相続人の財産から公共料金を支払うのはNG

亡くなった方が水道光熱費などの公共料金の契約者になっていて未払い金があると、死後に相続人が払わねばなりません。払わないと電気、ガス、水道などのライフラインを止められてしまうリスクも発生します。

ただし、相続放棄するなら安易に未払いの公共料金の支払いをするのは危険です。

被相続人(亡くなった方)の財産から水道光熱費を支払ってしまうと、「法定単純承認」に該当して相続放棄ができなくなってしまう可能性があるからです。「法定単純承認」が成立すると、すでにした相続放棄の効果も失われてしまうので注意しなければなりません。

1-1 単純承認とは

単純承認とは、被相続人のプラスの財産(預貯金、不動産など)とマイナスの財産(借金など)の全てを相続することをいいます。通常、相続が起きてから3ヶ月以内に相続放棄や限定承認をしなければ、自動的に単純承認をしたことになります。特に手続きは必要ありません。単純承認すると、水道光熱費などの公共料金をはじめとして借金や連帯債務、連帯保証債務、未払い家賃、滞納税などすべて相続してしまいます。

そして、法律上、一定の事由に当てはまると、当然に単純承認が成立することを「法定単純承認」といいます。法定単純承認が成立すると、相続放棄はできなくなってしまいますし、すでにした相続放棄の効果も失われてしまう可能性もあります。

1-2 法定単純承認が成立するケース

以下のような場合には法定単純承認が成立して相続放棄できなくなってしまうので、相続放棄したいときにはやってはいけません。法定単純承認は、民法第921条に規定されています。

①被相続人の財産を使った、処分した
預貯金を勝手に使ったり、自分の口座へ送金したりした場合などには法定単純承認が成立します。不動産の売却なども同様です。

②熟慮期間を過ぎても相続放棄や限定承認をしなかった
「自分のために相続があったことを知ってから3か月(通常は相続開始を知ってから3か月)」以内に相続放棄や限定承認の申述をしなかった場合にも法定単純承認が成立します。

③相続放棄した後に被相続人の財産を使った、処分した
相続放棄が受け付けられた後でも、被相続人の財産を使ったり処分したりすると法定単純承認が成立して相続放棄が取り消されます。

④家庭裁判所へ虚偽の財産目録を提出し、財産を隠そうとした
限定承認の際に虚偽の申告をして財産隠しをしようとすると、法定単純承認が成立します。

(法定単純承認)

民法第921条 次に掲げる場合には、相続人は、単純承認をしたものとみなす。

一 相続人が相続財産の全部又は一部を処分したとき。ただし、保存行為及び第六百二条に定める期間を超えない賃貸をすることは、この限りでない。

二 相続人が第九百十五条第一項の期間内に限定承認又は相続の放棄をしなかったとき。

三 相続人が、限定承認又は相続の放棄をした後であっても、相続財産の全部若しくは一部を隠匿し、私にこれを消費し、又は悪意でこれを相続財産の目録中に記載しなかったとき。ただし、その相続人が相続の放棄をしたことによって相続人となった者が相続の承認をした後は、この限りでない。

被相続人の財産から水道光熱費などの公共料金を支払うのは上記の「処分」に該当し、法定単純承認が成立する可能性が高い行為です。
被相続人の借金や未払金を引き継ぎたくないので相続放棄をしたいなら、被相続人の遺産から未払いの公共料金を支払ってはなりません。

2 相続人の財産から公共料金を支払うのはOK

法定単純承認に該当するのは、被相続人(亡くなった方)の財産」から公共料金を支払う場合です。

したがって、「相続人の財産」から公共料金を支払う場合には単純承認に該当しません。法定単純承認は成立しないので、後に相続放棄できますし、すでにした相続放棄が取り消されることもありません。滞納していた水道代や電気代などを支払いたいときには、自分自身の預貯金などの財産から支払いましょう。

なお、相続放棄をすれば被相続人名義の水道光熱費など公共料金の支払義務はなくなるので、支払う必要はありません。相続放棄をするととも公共料金の契約者名義を自分に変えて、「自分の負債となった部分のみ」を支払えば契約上の義務は果たせますしライフラインを止められる心配もありません。被相続人がのこした負債を無理に自分自身の財産から支払う必要はないので、理解しておきましょう。

3 公共料金の名義変更・解約は単純承認に当たらない可能性が高い

被相続人名義で水道光熱費の契約をしている場合、同居や別居の相続人が「名義変更」解約手続き」を行っても単純承認にならないのでしょうか?

この点について明確な判例は見当たりませんが、公共料金の契約の「名義変更」や「解約」をしても法定単純承認は成立しない可能性が高いと考えられています
法定単純承認は「財産を処分、費消したとき」に成立しますが、水道光熱費の解約手続き自体は財産を処分したり費消したりする行為に当たらないためです。

ガス料金については契約先のガス会社、電気料金については契約先の電力会社、水道料金については役所へ連絡をして、名義変更の手続きをしましょう。「被相続人の遺産からの支払い」さえしなければ基本的に問題ないので安心して手続きを進めてください。

繰り返しになりますが、未払料金がある場合には「相続人自身の財産」から支払うようにしましょう。

ただし、相続放棄前に解約手続きを行うと、相続放棄の手続きの際に家庭裁判所から照会があったときに問題視されたり、説明しなければならなかったりするリスクも生じるでしょう。そのため、相続放棄前には解約をせず、解約手続きは相続放棄が受理された後にした方が賢明と考えます。

4 「日常家事債務」は相続放棄しても支払わなければいけない

通常、相続放棄をすると被相続人の債務を支払う必要は一切ありません。滞納していた公共料金の支払義務もなくなります。

しかし、被相続人の債務が「日常家事債務」に概要する場合、支払義務が残ることになるので注意が必要です。

「日常家事債務」とは

民法第761条

夫婦の一方が日常の家事に関して第三者と法律行為をしたときは、他の一方は、これによって生じた債務について、連帯してその責任を負う。ただし、第三者に対し責任を負わない旨を予告した場合は、この限りでない。

夫婦の一方が「日常の家事」に関して第三者との法律行為によって負った債務については、夫婦のもう一方は連帯責任を負います(民法第761条 )。これを日常家事債務といいます。連帯責任ですので、夫婦の一方が負った債務をもう一方が支払わねばならないということになります。日常家事債務とは以下のようなものをいいます。

  • 日常的な衣食住にかかる料金
  • 家具家電などの購入費用
  • 水道光熱費
  • 日常的な娯楽や交際費
  • 日常的な教育費        など

したがって。相続人が被相続人の配偶者」の場合、未払いの公共料金(水道光熱費など)を「自分の債務」として払わねばなりません。配偶者には「日常家事債務の連帯責任」が及ぶためです。
日常家事債務の場合、被相続人の負債という性質だけではなく「相続人自身の負債」となるので、相続放棄しても免れることができません。自分の負債として支払わねばならないのです。

ただし、この場合でも「被相続人の財産」から支払いをすると法定単純承認が成立して相続放棄できなくなってしまいます。相続放棄をしたいなら、配偶者は自分の財産から水道光熱費を支払いましょう。

5 まとめ

それでは、本コラムのまとめです。


元木司法書士

被相続人が水道光熱費などの公共料金を支払っていなかった場合、相続人へ請求されるのが一般的です。

ただし、相続放棄する場合には、「被相続人の財産」から支払ってはなりません。相続人自身の財産から支払いましょう。解約手続きについては基本的に問題ありませんが、相続放棄の手続きが終わるまでは待つ方が安心といえます。

公共料金の支払いをはじめとして遺産相続の際には法律的な問題が生じるケースが多々あります。迷ったときには専門家の意見を聞いておくと安心ですので、お気軽に司法書士までご相談ください。

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