【注意】葬儀費用を預貯金から支払っても相続放棄できる場合・できない場合

悩む年配の女性 相談者

先日母が亡くなりました。母の預貯金から葬儀費用を出しても大丈夫ですか?預金を使ってしまうと相続放棄ができなくなってしまうというような話を聞いたので・・・

原則として母様の預貯金から葬儀費用を支払っても問題ありません


元木司法書士

ご家族が亡くなって葬儀をする場合に、亡くなった方の預貯金から葬儀費用を支出することはよくあります。
しかし、多額の借金などを理由に相続放棄」をする場合、相続財産を「処分」してしまうと「単純承認」とみなされ相続放棄が認められなくなります。

そのため、葬儀費用の支払いが相続財産の処分にあたる場合、それによって相続放棄ができなくなる可能性もあるのです。

本コラムでは、被相続人の財産から葬儀費用を支払った場合に、相続放棄はできるのかどうかを解説します。相続放棄ができなくなる可能性があるケースについても丁寧に解説しますので、ぜひ参考にしていただければと思います。

▼【1分で分かる】葬儀費用を亡くなった方の預金から支払っても、相続放棄できる?

1 葬儀費用を預貯金から支払っても相続放棄できる

被相続人(亡くなった方)の預貯金などの遺産を使ってしまうと、「単純承認」に該当し相続放棄が認められなくなる可能性があります。そのため、葬儀費用を被相続人の預貯金などから支払うと相続放棄ができなくなるとも考えられます。

しかし、被相続人の財産から葬儀費用を支払った場合であっても、社会的にみて不相当に高額でない限りは、単純承認には該当せず、相続放棄はできると考えられています。なぜなら、葬儀は相続とは関係なく、被相続人を弔う最後の社会的な儀式として遺族によって当然に行われるものであるからです。

つまり、通常の葬儀にかかる費用であれば相続放棄はできるということになります。この点につき、「身分相当の、遺族として当然営まなければならない程度」の葬儀費用であれば問題ないとしている判例もあります。

もっとも、どのくらいの金額が「通常かかる費用」で「身分相当」な葬儀費用なのかはケースバイケースといえます。亡くなった方の職業や年齢、地域などによっても異なってきます。判断に迷う場合は専門家に相談することをおすすめします。

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元木司法書士

葬祭費や埋葬費を受け取ったら相続放棄できない?

一般的に葬儀が終わった後、被相続人が加入していた保険の種類に応じて、葬祭費埋葬費を請求することになります。いずれも葬儀費用の一部が支給されるものです。
葬祭費は、被相続人が自営業者などで国民健康保険の被保険者であった場合に支給されるもので市区町村役場に請求します。一方、埋葬費は、被相続人が会社員で健康保険や協会けんぽに加入していた場合に支給されるもので、健康保険や協会けんぽに請求します。

葬祭費や埋葬費はいずれも相続財産ではありません。

したがって、葬祭費や埋葬費をもらったとしても相続放棄ができなくなることはありません

2 「単純承認」に当たると相続放棄が認められない可能性もある

葬儀費用の支払いが「相続財産の処分」にあたり「単純承認」とみなされてしまうと、相続放棄が認められなくなる可能性があります。

・単純承認とは何か

単純承認とは、相続放棄や限定承認をせずに、相続財産を無条件で相続することです。
単純承認をすると、被相続人のプラスの財産(預貯金や不動産などの利益となる財産)も、マイナスの財産(借金などの不利益となる債務)も全て相続します。

注意点として、一定の行為をした場合には、単純承認をしたものと法的にみなされる場合があります。
単純承認に該当する行為(「法定単純承認」とも呼ばれます)をした場合、自分では単純承認をするつもりがなかったとしても、単純承認をしたものとして法的に扱われてしまうのです

どのような行為が単純承認に該当するかは、民法第921条に規定されており、以下の3つがあります。

第921条(法定単純承認)

次に掲げる場合には、相続人は、単純承認をしたものとみなす。

一  相続人が相続財産の全部又は一部を処分したとき。ただし、保存行為及び第602条 に定める期間を超えない賃貸をすることは、この限りでない。

二  相続人が第915条第1項の期間内に限定承認又は相続の放棄をしなかったとき

三  相続人が、限定承認又は相続の放棄をした後であっても、相続財産の全部若しくは一部を隠匿し、私にこれを消費し、又は悪意でこれを相続財産の目録中に記載しなかったとき。ただし、その相続人が相続の放棄をしたことによって相続人となった者が相続の承認をした後は、この限りでない。

単純承認に該当すること① 相続財産の全部または一部を処分すること

相続財産の全部または一部を処分することは、原則として単純承認に該当する行為です。
相続財産の処分とは、相続財産を売却する、他人に譲る、捨てるなどの行為が該当します。

一般に相続財産の処分に該当する行為として、以下のものがあります。

・被相続人の預金口座を解約してお金を消費する
・被相続人の財産(自動車や貴金属など)を売却する
・被相続人の不動産を売却する
・被相続人が得ていた賃料の振込先を自分名義の口座にする

単純承認に該当すること② 熟慮期間を経過すること

相続放棄または限定承認(相続によって得たプラス財産の限度において、被相続人の借金などのマイナスの財産を相続する手続きをせずに熟慮期間(3ヶ月)を経過した場合、法的に単純承認をしたものとみなされます
熟慮期間とは、遺産を相続するか放棄するかについて検討できる期間のことです。熟慮期間の間は、相続するか放棄するかを決めずに検討することができます。

単純承認に該当すること③ 相続放棄後に背信行為をすること

相続放棄後に背信行為をした場合、単純承認をしたものとみなされます。
背信行為については、民法に以下の3つの行為が規定されています(民法第921条)。

・相続財産の全部または一部を隠匿すること
・相続財産を私的に消費すること
・悪意で相続財産の目録に記載しないこと

相続財産の全部または一部の隠匿とは、相続財産を所在不明の状態にすることです。
たとえば、被相続人の財産として宝石がある場合に、宝石をどこかに隠してしまう行為などが該当します。

相続財産を私的に消費することとは、相続財産を消費してしまうことです。
たとえば、被相続人の自宅に保管されていた現金を使って飲食をし、現金を消費してしまう行為などです。

悪意で相続財産の目録に記載しないこととは、相続財産の存在を知っていながら、あえて相続財産の目録に記載しないことを言います。
たとえば、被相続人が株式を保有していることを知っていながら、他の相続人に相続させないために、株式を目録に記載しない行為などが該当します。

・葬儀費用の支払いが単純承認に該当する場合とは

先ほど説明したように、社会的にみて不相当に高額でない限りは、単純承認には該当せず、相続放棄はできると考えられています

そのため、あまりに高額で身分相応ではない葬儀費用である場合には、相続財産の処分に当たり、相続放棄ができなくなる可能性もあるといえます

もっとも、どの程度の金額であれば相当といえるのかについて明確な基準があるわけではありません。また、多額の債務が明らかであるケースにおいては、被相続人の預貯金から葬儀費用を支払うことにリスクがあるのは否定できません。

被相続人の預貯金から支払う場合には、念のため一度専門家に相談するのがよいでしょう。

・領収書や明細は必ず保管しておく

領収書や明細があれば、葬儀に関してどのような支出をしたかを客観的に証明しやすくなります。
お布施や心付けなど、領収書のないものを支出した場合も、念のために支払先・金額・支払日などを記録しておくことをおすすめします。

葬儀関連の領収書などは必ず保管しておくようにしましょう

【専門家からのプラスワン・アドバイス】 


元木司法書士

仏壇や墓石の購入は問題ないのか?

被相続人の預貯金から仏壇墓石を購入した場合はどうなるのでしょうか?
葬儀費用の支出が相続財産の処分には該当しないとしても、仏壇や墓石を購入することは、相続財産の処分に該当するのではないかと考えることもできます。

この点につき判例は、仏壇や墓石の購入は、葬儀費用と同様に、不相当に高額でない限り、相続財産の処分には該当しないと判断しています。家族が亡くなった場合に、仏壇がなければこれを購入して死者をまつり、墓石がない場合にこれを建立して死者を弔うことは、我が国の通常の慣例であるからです。

3 まとめ

最後までお読みいただきありがとうございます。
いかがでしたでしょうか。

それでは、本コラムのまとめです。


元木司法書士

・相続財産の支出に該当する行為をした場合、法定単純承認にあたるので、原則として相続放棄はできなくなってしまう。

・被相続人の預貯金から葬儀費用を支払った場合であっても、常識的に考えて相当な金額であれば相続放棄は可能

・ただし、不相当に高額である場合には、相続財産の処分に該当すると判断されて、相続放棄できなくなる可能性があるので注意

・どの程度の葬儀費用の支出が相当であるかは、判例上は明確ではない。そのため、葬儀費用の支出について心配な場合は、相続放棄の経験な豊富な司法書士や弁護士に相談するのおすすめ

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