父が長い闘病生活の末に亡くなりました。父には借金があったので相続放棄をする予定です。多額の医療費がかかっているので高額療養費(医療費)の支給が受けられると聞いていますが、受け取って問題ないでしょうか?
相続放棄をした場合、高額療養費を受け取れる場合と受け取れない場合がありますので、注意が必要です。
相続放棄をすると、借金などのマイナスの財産だけでなく、預貯金や不動産などのプラスの財産を引き継ぐこともできません。
そのため、被相続人(亡くなった方)の医療費が高額であった場合、相続放棄をする予定の残されたご家族が高額療養費として支給を受けてよいのか、という問題があります。高額療養費を受けとることによって、相続放棄ができなく場合がありますので注意が必要です。
本コラムでは、高額療養費を受け取れる場合、受け取れない場合について分かりやすく説明いたします。相続放棄を検討されている方のお役に立てば幸いです。
目次
1 高額療養費とは
1-1 高額療養費制度とは
高額療養費制度とは、医療機関や薬局の窓口で支払った金額が、1か月(月のから終わりまで)で上限額(自己負担限度額)を超えた場合に、その超えた金額を高額療養費として支給する制度です。
支払った金額に入院時の食費負担や差額ベッド代等は含まれません。上限額は、年齢や所得によって異なります。
1-2 高額療養費を請求するには
【高額療養費の請求】
高額療養費の支給を受けるためには、公的医療保険(健康保険組合・協会けんぽの都道府県支部・市町村国保・後期高齢者医療制度・共済組合など)に、高額療養費の支給申請書を提出または郵送する必要があります。申請の際は、病院などの領収書の添付を求められる場合もあります。
加入している医療保険によっては、支給対象となる場合に支給を促してくれたり、また、自動的に高額療養費を口座に振り込んでくれるケースもあります。
1-3 被保険者が亡くなった場合は相続人が請求できる
高額療養費は被保険者本人が支給を受けるものですが、被保険者本人が受け取る前に亡くなってしまった場合、相続人が請求し支給を受けることができます。
相続人が請求する際は、相続人であることを証明する書類(戸籍謄本や法定相続情報一覧図など)が必要となります。
▶ 法定相続情報一覧図については下記のコラムをご覧ください。
2 高額療養費が受け取れる場合・受け取れない場合
【受けとれる場合・受けとれない場合】
2-1 高額療養費を受けとれない場合
高額療養費は、世帯主(国民健康保険の場合)または被保険者(健康保険の場合)が請求することができます。
そして、被相続人(亡くなった方)が世帯主や被保険者である場合、高額療養費は世帯主や被保険者の相続財産となります。そのため、世帯主や被保険者が死亡し、その相続人が高額療養費を請求した場合には、相続財産を相続したとして単純承認事由に該当し、相続放棄ができなくなります。
したがって、被相続人=世帯主または被保険者の場合、高額療養費を受けとることができません。
2-2 高額療養費を受けとれる場合
これに対して、被相続人(亡くなった方)が世帯主や被保険者でない場合には、世帯主や被保険者が亡くなった方の高額療養費を請求したとしても、相続財産を相続したことにならず、相続放棄をすることができます。
したがって、被相続人≠世帯主または被保険者の場合、高額療養費を受けとることができます。
3 まとめ
最後までご覧いただきありがとうございます。
高額療養費が受け取れる場合、受け取れない場合がお分かりいただけたかと思います。
それでは、本コラムのまとめです。
・相続人が高額療養費を請求することができるが、高額療養費の支給を受けると相続放棄ができなる場合もある。
・被相続人=世帯主または被保険者の場合、高額療養費を受けとることができない。
・被相続人≠世帯主または被保険者の場合、高額療養費を受けとることができる。
コメント