5分でわかる!相続登記における提出書類の原本還付4つのステップ

悩む女性 相談者様

父が亡くなり、これから自宅の相続登記をする予定です。法務局に提出する戸籍などの書類を、今後の銀行などの相続手続でも利用したいと考えています。法務局から提出する書類の原本を還付(返却)してもらうことはできるのでしょうか?

はい、可能です。ただし、原本を返却してもらうためには、書類を提出する際に「原本還付」という手続きが必要となります。

元木司法書士

 相続登記を申請する場合に、登記申請書に添付して提出する書類には、主に以下のようなもの(遺産分割協議によって相続する場合)があります。

 ①遺産分割協議書(※相続人全員が実印で押印したもの)または遺言書 

 ②相続人全員の印鑑証明書(※有効期限なし)

 ③亡くなった方の出生から死亡までの戸籍

 ④亡くなった方の最後の住所と登記簿上の住所をつなげる住民票の除票(本籍地記載のもの)または戸籍の附票

 ⑤相続人全員の現在戸籍

 ⑥不動産を取得する相続人の住民票または戸籍の附票

 ⑦相続する不動産の最新年度の固定資産評価証明書

 上記の書類の多くは、他の相続手続(銀行や証券会社の相続手続き、相続税の申告、車両の名義変更など)でも必要な書類です。手続ごとに書類一式を揃えていては、手間や費用が余計にかかってしまいます。

 そのため、相続登記を申請する際は、法務局に対して提出する書類の返却を求める「原本還付」という手続きを行うことがおすすめです。原本還付を行うことで書類の「原本」が戻ってきますので、同じ書類を何セットも揃える必要はありません。1セットの書類を使い回して相続手続を進めていくことができます。原本還付の手続きを行わないと、書類の原本は戻ってきませんので注意が必要です。

 そこで、本コラムでは、相続登記における原本還付の方法や注意点について分かりやすく解説いたします。

1.相続登記における原本還付の要否とメリット

原本還付の手続きは必ず必要?

 「原本還付」の手続きは、相続登記において、必ず行わなければならないものではありません。原本を返却して欲しい書類がある場合にのみ行います。すべて原本を提出してしまって構わない(同じ書類が複数あり提出した書類が返却されなくても問題ない)場合には原本還付の手続きを行う必要はありません。

原本還付した方がよい2つのケース

 それでは、どのような場合に原本還付の手続きが必要となるのでしょうか。主に下記の2つのケースが考えられます。

ケース① 相続登記以外の相続手続きで書類を利用する場合
銀行や証券会社の相続手続き(預貯金口座、株式、投資信託などの名義変更)や相続税申告の手続きにおいても、遺産分割協議書(遺言書)・印鑑証明書・戸籍などの書類が必要となります。これらの手続きがまだ終わっていない場合には、原本還付を行うとよいでしょう。
ケース② 新たに相続財産が出てくる可能性がある場合

 亡くなった方と生前あまり交流がなかった場合や財産の種類が非常に多岐にわたる場合などは、全ての相続財産を漏れなく把握することができない可能性があります。
 そのため、遺産分割協議書や遺言書では「その他一切の財産は●●が相続する」などのように後日財産が出てきても新たに遺産分割をしなくて済むような文言を入れておくことが一般です。

 ところが、相続登記で遺産分割協議や遺言書の原本を提出してしまうと、新たに財産が出てきた際は改めてこれらの原本を準備しなければなりません。
 
 したがって、今後新たに財産が出てくる可能性がある場合には、遺産分割協議書(印鑑証明書も含む)と遺言書については原本還付の手続きをしておくとよいでしょう。

原本還付のメリット

 相続登記で原本還付の手続きを行うメリットは、書類を新たに揃えるために費用と手間を省けるということに尽きます。

 戸籍などの書類を集めるにはそれなりに費用がかかります。原本還付を行い、他の手続きでも書類を使えるようにすることで書類の取得費用を最小限に抑えることができます。また、書類を一から収集する手間も省くことができます。

2.原本還付の手続き・手順 4つのステップ

 それでは、具体的に相続登記の原本還付の手続きを4つのステップに分けて見ていきましょう。

 相続登記といっても添付書類は事案ごとに異なります。本コラムでは、最も一般的なケースである「遺産分割協議による相続登記」を前提とします。この場合、原本還付の対象としない書類と対象とする書類は次の図のとおりとなります。右側の赤い四角の記載されている書類を原本還付することになります。

【原本還付の対象となる書類・ならない書類】

ステップ1 原本還付を希望する書類を全てコピーする

 
 まず、提出書類のうち、原本還付を希望する書類についてすべてコピーをとります。コピーに漏れがあった場合、原本還付を受けることができないので注意しましょう。

プラスワン・アドバイス

相続関係説明図の添付で戸籍すべてのコピーが不要に!

 相続関係によっては、法定相続人全員を示すために添付する戸籍謄本や改製原戸籍が膨大な量になる場合があります。戸籍謄本は、相続手続きを行うためには必ず提出を求められる書類ですので、原本還付の対象とすることがほとんどですが、大量の戸籍謄本をコピーするのはとても大変です。

 そこで、「相続関係説明図」を作成し添付することで、戸籍謄本のコピーをせずに原本還付をすることが可能となります。相続関係説明図とは、被相続人や相続人の情報や関係性を記載した図をいいます。
 
 この相続関係説明図を添付することによって、戸籍謄本の原本還付を簡単に行うことができるのです。なお、この方法をとる場合、「相続関係説明図」自体は原本還付を受けることはできません。

【相続関係説明図の見本】

ステップ2 書類をホチキス留めする

 
 続けて、登記申請書・相続関係説明図・ ステップ1でコピーを取った書類 をホチキスで留めます。原本還付が不要な書類であれば、コピーをとらず書類の原本を綴じ込んでしまって問題ありません。

ステップ3 書類に原本還付希望の旨を記載する

 原本還付を希望する書類のうち、先頭にくる書類のコピー(上記の例では、遺産分割協議書のコピー)に、以下のとおり記入・押印を行います。

「原本還付 ・ 原本に相違ありません ・ 氏名 ・ 押印 」

●原本還付:赤字、枠付きで記入します。
●原本に相違ありません:とじ込みをしたコピーが確かに原本の写しであるということを示します。
●氏名:登記申請人の氏名を記載します。
●押印:登記申請書に押印した登記申請人の印鑑で押印します。

 原本還付を希望する書類すべてに、上記の「原本還付・原本に相違ありません・氏名・押印」を記入しても構いませんが、書類の量が多い場合はとても煩雑です。

 そこで、最初の書類にのみ「原本還付・原本に相違ありません・氏名・押印」 の記入を行い、その後は、前ページの書類の裏面と、次ページの書類の表面2枚を跨ぐように「割印」を行います。割印は全ての書類に行う必要があります。割印は一番最初のコピーに押印した印鑑と同じ印鑑で押印します。全ページに割印を行うことで、2枚目以降の書類についても「原本還付・原本に相違ありません・氏名・押印」 の表記を行ったことになります。

ステップ4 相続登記の申請

 ステップ3までの処理が完了したら、いよいよ相続登記の申請です。

 「相続登記」を申請する方法は3つあります。窓口に直接書類をもっていく「窓口申請」、書類を郵送する「郵送申請」、オンラインで必要な情報を送付する「オンライン申請」です。

 原本を郵送で返却してもらいたい場合には、登記申請時に提出書類と共に、返信用封筒も提出します。

 相続登記の申請については下記のコラムをご覧ください。   

プラスワン・アドバイス

「法定相続情報一覧図」があれば「戸籍」が不要?

 「法定相続情報一覧図」とは、法務局から発行される相続関係を証明する書面をいいます。法定相続情報一覧図の発行を受けるためには、相続関係を証明するための戸籍謄本などを全て集めた上で、申請書などと一緒に法務局に提出する必要があります。発行は無料です。取得の手続きを弁護士、司法書士、税理士などの専門家に依頼することも可能です。

 登記申請の前に法定相続情報一覧図を取得している場合には、相続登記の申請の際に戸籍謄本を提出する必要はありません。法定相続情報一覧図がその代わりとなります。法定相続情報一覧図に、故人の最後の住所や不動産を相続する相続人の住所も載せていた場合には、登記申請時の住民票や戸籍の附票の提出も省略できます。もっとも、法定相続情報一覧図は相続登記の申請と同時に行うことが多いです。

 法定相続情報一覧図は金融機関の相続手続や相続税の申告にも利用することが可能です。

【法定相続情報一覧図の見本】

 法定相続情報一覧図の具体的な取得方法については下記をご覧ください。

【法務局】法定相続情報証明制度の具体的な手続について

3.提出した書類の受け取り時期と方法

【受取時期と受取方法】

  

 

 

 

 原本還付を希望した書類の受け取りは、登記手続きが完了した時です。
  
 書類の受け取りは、登記申請書に記載した方法で行います。受取方法は次のとおりです。

<原則>窓口受取
 原則は、窓口で受け取る方法となります。窓口受取希望の場合には、登記申請書への記載は不要です。

<例外>郵送返却
 郵送で返却を希望した場合には、登記申請書にその旨の記載をし、書類を提出する際に返信用封筒も一緒に提出する必要があります。登記が完了すると、登記申請人の住所に返却されます。

【登記申請書の見本】

4.原本還付手続きの注意点 

 相続登記の申請において原本還付を手続きをする場合には、下記の2点に注意しましょう。

注意点1 原本還付の手続きは必ず登記申請時に行う

 原本還付の手続きは、必ず登記申請と同時に行わなければなりません。登記申請をした後に、やはり書類の原本を返却して欲しいと申し出ても応じてもらえませんので注意が必要です。

 相続登記の申請の前に他の相続手続きで必要となる書類を精査し、どの書類を原本還付するのかをしっかりと確認しましょう。

注意点2 コピーだけではなく原本も提出することになる

 原本還付を希望する書類だとしても、登記申請時は必ずそれぞれの原本の提出が求められます。コピーだけではなく、その原本も必ず同封して登記申請をする必要があります。

 したがって、相続登記を申請し法務局で登記が審査中の間は、戸籍などの原本を他の相続手続に利用することができなくなります。どのような順番で相続手続きを進めていくのかは事前にしっかり検討しておく必要があります。

5.まとめ

 最後までご覧いただきありがとうございます。いかがでしたでしょうか。

 「提出した書類の原本を返却してもらう」だけの手続きであるにもかかわらず、厳格な登記手続であるが故に、細かいルールがあります。相続登記を行う上では、その他にも煩雑な手続きや法律知識が必要になる場面がいくつもあります。ご自身での対応が難しいと感じた場合には、登記の専門家である司法書士にご相談することをおすすめします。

 それでは、本コラムのまとめです。

 

まとめ

①相続登記における原本還付の要否とメリット

・原本還付は必ず必要というわけではない
・原本還付した方がケースは2つある
・原本還付のメリットは、費用と手間を省けること

②原本還付には4つのステップがある

③書類は相続登記が完了したときに返却してもらえる

④原本還付手続きには2つの注意点がある

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