【重要】家族信託の契約書は必ず「公正証書」で作成しリスク回避する

 家族信託の信託契約書は、「公正証書」で作成することが推奨されています

 公正証書と聞くと、あまり馴染みのない方も多いでしょう。公正証書とは、公証人(裁判官、検察官、弁護士あるいは法務局長や司法書士など長年法律関係の仕事をしていた人の中から法務大臣によって任命された人)によって作成された公文書のことをいいます。契約書など文書を公正証書にすることによって、その内容が明確になり、トラブルを未然に防ぐことができます。公証人は、全国で約500名おり、公証人が執務する事務所である公証役場は約300箇所あります。

【参考】全国の公証役場一覧 

 家族信託が急速に普及しつつある中、信託契約書を公正証書で作成しなかったことによって、次のようなトラブルが起きています。

「親に無理やり契約させたのではないかと疑われ、家族で揉めてしまった

「せっかく契約書を作成したのに、どこかへ紛失してしまった

「信託口口座を開設しようとしたら銀行に断られてしまった

 信託契約書を後から公正証書にすることもできますが、余計な手間や新たに費用がかかります。また、親がすでに認知症を発症していた場合には公正証書にすることはもはやできません。

 そこで、本コラムでは、家族信託を始める前に必ず知って欲しい家族信託の契約書を公正証書で作成すべき理由と注意点について分かりやすく説明します。是非とも最後までお読みください。

1 家族信託の契約書を公正証書で作成すべき3つの理由

 家族信託は、一般的に委託者(財産を管理をお願いする人)と受託者(財産を管理する人)が信託契約を締結することによって開始します。

 そして、信託契約が確かに締結されたことの証拠として、「信託契約書を作成することになります。信託契約書には、委託者と受託者両名が署名と捺印を行うことになります。   

 法律上、信託契約書の形式は特に決められているわけではありませんので、必ず公正証書にしなければならないというわけではありません。実際、おすすめはできませんが、私文書(公正証書などの公文書ではない文書)の形式で契約書が作成されているケースもあるようです。

 しかし、家族信託を安全・確実に運営していくためは、信託契約書は必ず公正証書で作成すべきです。それには、次のような理由があります。

理由① 家族間の紛争を防止できるから

● 公正証書の効力は強力である

 契約書を公正証書で作成する場合、公証人は当事者の意思や契約内容を必ず確認しますので、公正証書には非常に強力な証拠力と証明力があります。後になって「そんな契約を結んだ覚えはない」と契約そのものを否定したり、「契約内容が思っていたのと違う」と契約内容に異議を述べることは難しくなるのです。

 したがって、家族信託の契約書を公正証書にすることによって、後々契約の効力や内容の解釈などを巡ってトラブルに発展するリスクを最小限に抑えることができます

● 公正証書で家族間のトラブルを防ぐ

 例えば、父、母、長男、二男、三男の5人家族において、父を委託者、長男を受託者とする家族信託を開始するとしましょう。家族信託を開始するには、委託者(父)と受託者(長男)が信託契約を締結することになります。父と長男以外の家族は信託契約には関与する必要はありません。父と長男だけで家族信託を始めることができるのです。

 となると、二男や三男は次のような疑念を抱くかもしれません。

「家族信託を開始したときに父は判断能力がなかったのでは」長男が財産を独り占めするために家族信託を勝手に始めたのでは」

 家族信託は親が高齢になってから始めることが多いので、後々(特に親が亡くなった後)に本当に親の真意に基づくものであったのかを巡って、家族の間でトラブルになる可能性があります。場合によっては裁判沙汰になってしまうかも知れません。

 このような場合であっても、信託契約書を公正証書で作成していれば、家族間のトラブルを防止することができます。公証人が委託者と受託者の意思に基づいて家族信託を開始されていることをしっかり確認しているからです。私文書で信託契約書を作成していた場合には、家族信託が本当に真意に基づいたもので、契約当時に判断能力があったことを後日証明することは難しいでしょう。

 家族のためを思って始めた家族信託が家族の仲違いの原因となってしまわないように、族信託の契約書は公正証書で作成することを強くオススメします

理由② 紛失や偽造・改ざんを防止できるから

● 原本は公証役場で保管される

 公正証書によって作成した場合、公正証書の「原本」は公証役場において半永久的に厳重に保管されることになります。大災害などで公証役場が物理的になくなってしまった場合であっても、データベースで保管されているので安心です。

 原本とは、当事者が署名・捺印した文書そのものをいいます。言い換えれば、唯一無二のオリジナルということなります。この原本が公証役場で保管されることによって、文書を紛失したり、偽造・改ざんされてしまうリスクを避けることができるのです。

 なお、原本は公証役場に保管されることになりますが、当事者には公正証書の「正本」や「謄本」が渡されることになります。正本や謄本には、原本と全く同じ内容が記載されていることを公証人が証明していますので、公的手続きなどに利用することが可能です。

● 公正証書で作成すれば紛失のリスクはない

 家族信託の契約書を公正証書に作成することによって、契約書の原本は公証役場で保管されることになります。委託者や受託者には、契約書の正本や謄本が渡されることになります。

 万が一、契約書の正本や謄本を紛失してしまった場合であっても、公証役場においていつでも再発行を受けることができるので安心です

 信託契約書が私文書である場合はそうはいきません。紛失した場合もちろん再発行を受けることはできません。新たに契約書を作成するしかありません。

● 公証役場で作成すれば偽造・改ざんのリスクもない 

 家族信託の契約書を公正証書に作成することによって、契約書の原本は公証役場で保管されることになります。

 したがって、契約書を作成した後に契約書の内容を誰かに偽造されたりや改ざんされてしまうリスクはありません。たとえ、委託者や受託者が保管している正本や謄本が偽造されたり、改ざんされてしまった場合であっても、原本がそのままの形式で公証役場に保管されていますので影響を受けることはありません。

 信託契約書が私文書であると、家族信託が開始した後に委託者・受託者以外の家族などに契約書の内容を偽造・改ざんされてしまうリスクがあることは否定できません。

理由③ 銀行で信託口口座を開設する条件になっているから

● 信託口口座とは

 金銭を家族信託する場合は、「信託口口座」という家族信託専用の口座を受託者が開設して、その口座で金銭を管理することが推奨されています。信託口口座の開設は法令上の義務ではありませんが、家族信託を安全に継続するためには不可欠なものとされています。

 受託者には、法令上「分別管理義務」という義務が課せられています。これは、委託者から預かった財産と受託者自身の財産をしっかり分けて管理しなければならないということです。この分別管理義務を確実に果たすために、信託口口座の利用が求められていることとなります。

信託口口座とは、一般的に次のような特徴がある口座をいいます。

 特徴① 委託者(親)と受託者(子)の両方の氏名が口座名義に付される

 特徴② 受託者(子)が先に亡くなってしまっても口座が凍結しない

 特徴③ 受託者(子)が破産したとしても口座が凍結しない 

↓【参考】信託口口座についてはこちらをご覧ください。↓

 例えば、受託者の普通口座で信託の金銭を管理している場合、受託者が先に死亡してしまうと、受託者個人の相続財産とみなされて口座が「凍結」されてしまい、信託した金銭が利用できなくなる恐れがあります。これでは家族信託をした意味がなくなってしまいます。信託口口座で金銭を管理していれば、口座の名義を信託契約書で定められた次の受託者(後継受託者といいます)に変更するだけで、金銭の管理をこれまでどおり継続することができます。

● 信託口口座の開設条件

 信託口口座の開設にあたっては、金融機関ごとに様々な条件が設定されています。そして、大半の金融機関に共通する条件は、「信託契約書が公正証書で作成されていることです。

 したがって、信託口口座を開設するためにも、家族信託の契約書は公正証書で作成されるべきなのです

 なお、信託口口座は全国すべての金融機関で開設できるわけではありません。契約書を作成する前に、どの金融機関で信託口口座を開設すべきか専門家と相談しておくようにしましょう。

2 公正証書で信託契約書を作成する前に知っておくべき3つの注意点

 

 以上のとおり、族信託の信託契約書は必ず公正証書で作成すべきです。公正証書で作成することによって、家族信託を円満に開始し、安心して家族信託を続けていくことが可能となります。

 しかし、公正証書で信託契約書を作成する前に次のような点に注意しましょう。

 以下、順番に説明していきます。

注意点① 公正証書にする前に、契約書の案文を作成する必要がある

 

 家族信託の契約書は公証役場で作成してもらえるわけではありません。事前に契約書を作成した上で、公証役場に行く必要があります

 家族信託の契約書は、専門的な知識やノウハウが必要となりますので家族信託に精通した司法書士や弁護士に作成を依頼するのが一般的です。公証人は家族信託の専門家というわけではありませんから、契約書の作成は専門家に作成をお願いすることになります。

 また、信託契約書を作成する前提として、家族関係やライフプランをベースに成年後見制度などの他の制度と比較しながら、家族にあった家族信託のスキーム構築することが必要不可欠です。信託契約書を専門家に依頼することで、このスキーム構築も専門家の方で行ってもらえるというメリットもあります。

注意点② 公正証書を作成した後、速やかに信託財産の移転手続きを行うこと 

 公正証書によって信託契約を締結した後は、速やかに信託財産の名義を受託者に変更する必要があります。「信託契約が終われば後は何もしなくてよい」と誤解している人が多いのですが、それは誤りです。

 不動産を家族信託した場合には「信託登記」によって委託者(親)から受託者(子)に名義変更をする必要があります。また、金銭を家族信託した場合には、信託契約締結後、信託口口座を開設し委託者(親)の口座から金銭を移す必要がありますこれらの手続きを怠って、「不動産の名義は親のまま」「お金は親の口座に入ったまま」にしておくと、受託者が信託財産の管理をすることができません。また、後になって財産を移転しようとした場合、委託者(親)の判断能力が低下していた場合には、財産の移転手続きができない可能性があります。これでは家族信託をした意味がなくなってしまいます。

 公正証書によって信託契約書を締結したら、できるだけ早く信託財産の移転手続を行いましょう

↓【参考】信託登記についてはこちらをご覧ください。↓

注意点③ 公正証書を作成するには、公証役場の費用がかかること

 

 信託契約書を「公正証書」で作成する場合には、公証役場の費用が発生します。

 公証役場の費用として、下記の図のとおり信託財産の価額に応じて基本手数料がかかります。また、証書の枚数によって手数料が加算されます(4枚を超えるときは、超える1枚ごとに250円加算)。家族信託の場合、3万円~10万円程度に収まるケースがほとんどでしょう。

 また、公正証書を作成するためには、原則として委託者と受託者が公証役場に出向く必要がありますが、高齢や病気などの理由で公証役場に出向くのが困難な場合、公証人に自宅や施設まで出張してもらうことも可能です。公証人に出張を依頼する場合、基本手数料額が1.5倍となり、日当(1日2万円、4時間まで1万円)や交通費がかかります。

【参考】日本公証人連合会 法律行為に関する証書作成の基本手数料

 これまで説明してきたように、費用がかかることを考慮しても、公正証書には多くのメリットがあります。家族で揉めてしまい裁判になったときの費用や精神的な負担を考えると、この金額を出し惜しむべきではありません。安心・安全な家族信託を続けていくための必要経費として割り切って考えましょう

3 公正証書を利用した家族信託の始め方

 

 上記の注意点①でご説明したように、家族信託の契約書を公正証書で作成するには、前提として専門家に依頼をして家族信託スキームの設計と契約書の案文作成を依頼することが一般的です。

 実際に家族信託を開始する際は、下記のような流れで進めていくことになります。

家族信託を開始するための一般的な流れ

ステップ1 専門家に相談する 

ステップ2 家族会議を行う

ステップ3 依頼する専門家を決める

ステップ4 家族信託スキームの設計・信託契約書(案)の作成

ステップ5 公証役場との事前調整

ステップ6 金融機関との事前調整

ステップ7 公証役場において家族信託契約の締結

ステップ8 信託登記の申請

ステップ9 信託口口座の開設

ステップ10 信託金銭の入金

 今回のテーマである信託契約書の公正証書による作成は、上記の「ステップ7」となります。ここに至るまでに、専門家へ依頼をして(ステップ3)、スキーム設計・契約書案の作成を行い(ステップ4)、公証役場・金融機関との調整を経る(ステップ5、6)必要があります。

 家族信託を検討している方は、まずは弁護士や司法書士などの専門家に相談してみると良いでしょう

4 まとめ

 最後までお読みいただき誠にありがとうございます。

 いかがでしたでしょうか。

 家族信託を開始するにあたり、信託契約書を公正証書で作成することがいかに大切かお分かりいただけたかと思います。何かご不明な点がございましたらお気軽にお問い合わせください。

まとめ

● 家族信託の契約書は公正証書で作成すべき

理由① 家族間の紛争を防止できるから

理由② 紛失や偽造・改ざんを防止できるから

理由③ 銀行で信託口口座を開設する条件になっているから

● 公正証書で信託契約書を作成する前に知っておくべき3つの注意点

注意点① 公正証書にする前に、契約書の案文を作成する必要がある

注意点② 公正証書を作成した後、速やかに信託財産の移転手続きを行うこと 

注意点③ 公正証書を作成するには、公証役場の費用がかかること

 

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